Ⅴ-1-2.トレンドライン分析
Ⅴ-1-2.トレンドライン分析
トレンドライン分析は、株価の漠然としたトレンドの上にラインを引き、トレンドをより具体的につかめために利用する。
株価を数字の羅列だけではなく、株価の推移を絵で表すチャートで見ると、人は株価の方向性を一目瞭然に俯瞰できる。なぜならチャートという図形を認識する人の脳は右脳をつかさどるからである。
1. トレンドはなぜ生まれるか
株価を前日比で上昇するか下降するかの確率はほぼ1/2である。
ところが、日経平均の現在株価の推移と、将来株価の方向性が出現する時間の間に1次相関の関係である直線的な比例関係がある。7割の期間で相関関係がある。
行動心理学から、投資家にとって株価の高安の判断は最も記憶の新しい直近の値と比較したり、買値や売値の値覚えと比較したりするためである。
株価は一見ランダムのような動きに見えるが、投資家の行動心理学がトレンドを生む要素となっている。
しかし、トレンドが発生するのは過去の影響だけではない。株価の将来に対する期待によっても発生する。
投資家が現在の株価と将来の株価予想を比較する中、後者が高ければ買い手が増大し、低ければ売り手が増えるからである。
だが、そうした売り買いの勢力は瞬時に増大するものではない。
株価の将来的な価値はあくまで予想であって不確実であるためだ。むしろ、確実さの度合いが高まるにつれ時間の推移ともに徐々に株価の変化となって表れる。
つまり、時間と株価の1次関数における傾きが生じ、上昇および下降のトレンドが出現する。
要するに、トレンドは株価における過去の影響を受けた需給と、将来期待による需給の変化の両面から発生する。
株価が上値トレンドラインを下回った場合は、需給が変化する兆しとして看過できないシグナルとなる。
2. トレンドラインの基本的な考え方
横ばいトレンドと上昇トレンドの違いは買い勢力の強さに関係する。
横ばいトレンドの場合の上下水平ラインはトレンドラインと呼ぶ。
しかし、上昇トレンド、下降トレンドの場合の派生ラインはトレンドラインと質的に異なるラインである。
3. トレンドラインやその派生ラインの名称
<上昇・下降トレンドの場合>
上昇トレンドライン: 下値支持線(サポートライン)
下降トレンドライン: 上値抵抗線(レジスタンスライン)
<横ばいトレンドの場合>
水平下値支持線: ホリゾンタル・サポートライン
水平上値抵抗線: ホリゾンタル・レジスタンスライン
上昇・下降トレンドの場合の派生ラインは、それぞれ「上値傾向線」、「下値傾向線」と呼び、トレンドラインとは異なるラインである。
4. トレンドラインの引き方
(イ) 正確なトレンドラインの引き方
① 「意味ある安値・高値」どうしを結んでそのラインを延長する。
② トレンドラインを超える安値・高値があってはならない。
③ トレンドラインを超える安値・高値が出現したら、その時点で同ラインは役割を終え消滅する。
その時点でトレンドが転換したかどうかを見極めていかねばならない。また株価がすぐに反転した場合は、新たなトレンドラインを模索することになる。
④ 株価が最も近い安値・高値を超えた時点で引くことができる。
安値・高値が何度も更新された場合、トレンド転換をつかみにくいので、トレンドラインによる判断には他のテクニカル指標を組み合わせ、確率を高めていくことが必要である。
トレンドライン分析以外の、フォーメーション分析のトライアングルに、レジスタンスラインやサポートラインの表記が使われるが、これはトレンドラインではない。
トライアングルで引かれたラインは、暫定的なレジスタンスラインおよびサポートラインとして理解する必要がある。
(ロ) 横ばいトレンドにおけるトレンドラインの引き方
横ばいトレンドの場合は上記の4つの条件は適用できない。
横ばいトレンドとして捉えるなら、そのトレンドの帯の上下の両端を見つけることができる。
しかし、安値・高値どうしの2点を結ぶことができない場合は、横ばいトレンドの中の最安値・最高値から引き出すサポートレベルラインをもってホリゾンタル・ラインに置き換えることができる。